
韓国の取引先とのオンライン商談。日本側の担当部長は自信満々でした。自社の提案を一通り説明し終えると、先方の責任者がこう言ったのです。「검토해 보겠습니다。」——日本語通訳では「検討してみます」と聞こえるこの一言を、部長は「前向きな返事」と受け取りました。その後、彼はフォローも十分に行わず、結果として案件は静かに消えていきました。
「검토해 보겠습니다」は本当に「検討します」なのか
直訳すれば「検討してみます」。しかし、ビジネス現場の韓国語としての「검토해 보겠습니다」は、しばしば「この場でははっきり断らないが、積極的に進めるつもりもない」という、非常に曖昧で距離を置いたサインです。日本語の「前向きに検討させていただきます」よりも、むしろ「とりあえず持ち帰ります」「強く押すつもりはありません」に近いニュアンスを帯びることが少なくありません。
実務上、このフレーズが出たあとに日本側から積極的なフォローがなければ、案件はそのまま棚ざらしになるケースが多いのが現実です。それでも日本人担当者は、「向こうが検討すると言ったのだから、連絡を待とう」と考えてしまいがちです。このギャップこそが、商談のスピードと成果を大きく左右します。
「검토해 보겠습니다」=
ビジネス通訳としての現場感覚
「可能性はゼロではないが、あなた次第で本当に動くかどうかが決まる」
言葉だけでは読めない、韓国ビジネスの「本音と建前」

韓国のビジネス現場では、相手との関係性や場の空気を壊さないために、ストレートな「NO」を避ける表現が多用されます。文字通りに訳すと穏やかで協力的に聞こえる一方、実際には「これ以上は進めたくない」「慎重に距離を取りたい」というシグナルになっていることもよくあります。
ここからは、「検討してみます」以外にも、日本人ビジネスパーソンが誤解しやすい代表的な表現をいくつかご紹介します。いずれも機械翻訳ではまず拾えない「行間」が勝負どころです。
直訳すると危ない代表的なフレーズ4選
1. 나중에 연락드리겠습니다(後でご連絡いたします)
機械翻訳も人間も、まずは「後ほどご連絡いたします」と訳すでしょう。しかし、商談の流れや声のトーンによっては、「こちらから積極的に連絡する予定はあまりない」「この場をうまく収めたい」という意味合いで使われることが少なくありません。具体的な時期や次のアクションが伴っていない場合は、かなり慎重に受け止める必要があります。
2. 한번 해볼게요(とりあえずやってみます)
日本語の「やってみます」は前向きな印象がありますが、韓国語の「한번 해볼게요」は、場を収めるためのやや消極的な返答として使われることも多い表現です。「本当は乗り気ではないが、完全に断るのも角が立つ」という微妙な距離感が隠れている場合、「任せたつもり」の日本側と、「最低限だけ対応しよう」という韓国側で、大きな温度差が生まれます。
3. 그렇게 하죠(では、そうしましょう)

一見すると、日本語の「そうしましょう」「その方向で進めましょう」に近い、力強い前向き表現に見えます。ただし実際には、「他に良い案もないし、それでいいです」「そこまで強く反対はしません」といった、半歩引いたニュアンスで使われる場面も多くあります。相手が本当に賛成しているのか、それとも「面倒なので受け入れた」のかを読み取るには、声の調子や前後の発言の微妙なズレまで聞き分ける必要があります。
4. 조금 어려울 것 같아요(少し難しいかもしれません)
日本語感覚で「少し難しい」と言われると、「工夫すれば何とかなるかもしれない」という余地を感じるかもしれません。しかし韓国のビジネス会話で「조금 어려울 것 같아요」と言われた場合、実際にはかなりはっきりした「NO」であることが多いです。それを「じゃあ条件を変えればいけますよね?」と押し続けると、関係性自体を傷つけてしまうリスクがあります。
なぜAI翻訳では危険なのか
最新のAI翻訳は、単語や文法レベルでは非常に高い精度を持っています。しかし、ここまで見てきたような「その場の空気」「立場の差」「韓国企業の社内事情」といった背景情報までは、まだ十分に読み取れません。結果として、「검토해 보겠습니다」「나중에 연락드리겠습니다」が、すべて前向きな表現として日本語に変換されてしまうのです。
問題は、誤訳そのものよりも、その誤訳を前提に日本側の行動が決まってしまう点にあります。「相手が検討すると言ったから大丈夫」「後で連絡が来るはずだ」と信じて動かなければ、チャンスは静かに失われます。翻訳結果の日本語が自然であればあるほど、その落とし穴は深くなっていきます。
「言葉の意味」ではなく「ビジネスの意図」を訳すパートナーを
韓国語と日本語の間には、単語レベルの違いだけでなく、商習慣や意思決定プロセス、社内政治まで含めた「文脈の壁」が存在します。その壁を越えるには、辞書的な訳語ではなく、「この場面で韓国側が本当に伝えたいことは何か」を汲み取って伝えられるプロの通訳・翻訳者が必要です。
もし、韓国企業とのやり取りで「検討してみます」「後で連絡します」といった言葉に少しでも不安を感じたことがあるなら、それはもうプロに相談すべきサインかもしれません。案件の成否は、一つひとつの表現の解釈に左右されます。AI翻訳だけに任せるのではなく、韓国ビジネスの空気まで理解した通訳パートナーと一緒に、確実に成果につながるコミュニケーション設計をしてみませんか。
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